タカラバコ

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シロップ

昔から、生きることに行き詰まると好きな街に逃避したくなることがよくある。何がしたいわけでもなく、ただただ好きな街の空気が吸いたくなるのだ。

その日ももうどうしようもなく生きてるのがしんどくなって、ひとりで部屋にこもっていたらどんどんダメになりそうだったので、とりあえず近所を散歩しようと外へ出たはずが気がついたら東京にいた。夜9時半すぎ。

疲れるまで散歩をしたりカフェに入ったり、終電間近に寄った飲み屋では知らない人たちと一緒に強めのお酒を飲んだりゲームをしたりしていたら、夜はいつの間にか明けていた。楽しかった。
帰り道にアルコールと煙草の匂いが染み付いた身体で浴びた朝日が本当に気持ち良くて、あの朝日の眩しさと共に私はこの日のことを一生忘れたくないなぁと思う。



顔や服装がタイプだとか、音楽の趣味が合うだとか、そういう上っ面なことにだけときめいて、とくに中身のない綺麗な言葉を踊らせたり、それをとくに考えもせず素敵ねって受け取ったり、
なんとなく惹かれてはなんとなくお互いに求め合うのがヒトの本能みたいで好きだった。

責任とか良心とかまるでない、欲しくなったら擦り寄って、飽きたらそっぽ向いて、また欲しくなったらまた擦り寄って、
そうやって、揺さぶられるたび締め付けられる苦しみを愉しんでは、溺れていくのがたまらなく気持ち良かった。

ねぇ、好きだよ。


たとえどこまで続いても、先へ進むこともなければ、中身が埋まることもないけれど、中身のない日々で中身のない恋に出会えたことを私は愛おしく思うのです。

ねぇ、まだ踊らせて。


アルコールと煙草まみれで迎える朝はやっぱり眩しくて、踊る言葉たちが余計にきらきらして見える。いつか終わりを迎えることを知っているから、忘れ去ってしまわぬようにまた今日も灼きつけて、くだらないことばかり気が済むまで繰り返して、めちゃくちゃになってももう止まることなど出来ないのです。


こんな文で綴れるような綺麗事ではない。