タカラバコ

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花束

大好きなバンドが見れなくなった。好きになったばかりの頃は真っ白で儚くて幻想的で繊細で、聴いていると頭も体もふわふわしてくる感覚がたまらなく好きで、初めてライブを見てからすぐに、ライブがある限り月一回は必ずライブを見に行くようになった。

応援している間に白だったイメージは青になったり黒になったり赤になったり、美々しくなったり刺々しくなったりシューゲイザーに溶かされそうになったり重たい轟音に殺されそうになったり、私の好みとは少し離れたかもしれないと思った時期もあったけど、それでもこの6年とか7年とか常に私はこのバンドが大好きで好んで彼らの音を流す毎日が当たり前だった。

今年でた新しいアルバムはそれはもう素晴らしいもので、初めてCDを再生した時には私はこのバンドと出会うことができて本当に幸せだなあと心底思った。アルバムはリリースツアーの初日から販売が開始されたからツアーの初日は収録曲をほとんど知らずにライブを見る形となったんだけど、その中でもある一曲が始まった時に私は鳥肌が立って胸が高鳴って全身が多幸感で満たされてうまく表現できないけれどとにかく一瞬でビビビッときて一瞬でその曲の虜になってしまった。音源も音源で素晴らしいけど、とくにライブで聴くその曲が本当に圧巻で、こんな曲に出会えるなんて生きててよかったなあなんてわりとマジで思ったんだ。私はあの時の感動を一生忘れたくない。

久しぶりにちょっと遠くのライブハウスまで行って、めっちゃくちゃ良いライブを見た翌日にバンドからメンバーが半分脱退することが発表された。残り1ヶ月しかなかった。残りのライブでは懐かしい曲をたくさんやってくれたり、10曲中5曲同じ曲をやる狂ったセトリを見せられたり、哀しくて辛くて寂しくてたくさん泣いたけど、圧倒的に幸せとか感動とか楽しさのほうが大きくて、このバンドのファンになれて良かったと心から思った。バンドを続けてくれるメンバーも辞めていくメンバーもみんな、これからもずっと幸せでいてくれたらいいなあって本当に本当に思った。

アニバーサリーライブでもあった最後のライブでは、友達と一緒に花を贈った。色合いも質感もたくさん考えて、花言葉もたくさん調べて、バンドにまつわるお花でいっぱいのバンドにぴったりな、とても想いのこもった花を贈れたと思う。

最後のライブから最初のライブまでの3ヶ月間もこれまでと変わらず彼らの音楽を聴く毎日が当たり前だった。3ヶ月ぶりに大好きなライブハウスで大好きなバンドの音を目の前で浴びた時は、とても胸が高鳴ったし好きな音楽が目の前にあることがたまらなく嬉しかった。





はずだった。好きな音楽が無くならず続いてくれたことが何よりも嬉しかったはずなのに、三曲目に大好きな曲が始まったときにもう私が大好きだった音は景色は二度と見れないんだって、急に現実突きつけられたような感覚になって、それ以降はもうずっとダメだった。

メンバーが楽しそうに演奏しているのが嬉しかったし、目の前で鳴る音楽は本当に最高なのに目の前の光景があんまりにも綺麗で綺麗で、それが尚のこと苦しかった。

この日サポートミュージシャンとして出演していた3人のことは各々も、各々が過去に現在に所属していたバンドのことも、とても好きだったからメンバーが発表されたときには「これ以上のメンバーはない!」とさえ思ったのに、全然受け入れられなくて、受け入れられない自分がいるのもすごく嫌だった。とくに、向き合って演奏したり暴れたり、前のメンバーと一緒によくやっていたパフォーマンスを新しい人たちとやっているのを見るのがものすごくつらかった。それが絶賛されていたのも正直すごく嫌だった。

おんなじボーカルが歌っておんなじ楽器でおんなじ楽譜を弾いているはずなのに、私が好きだった音はもうそこにはなくて、ライブが進めば進むほど、にこにこギター弾きながら上下にリズム刻む姿とか、ベースを背負ってシンセを弾く姿とか、別に今まで特別好きだったわけでもない何気なかった光景がどんどん蘇ってきてしまって、そんなもう記憶の中にしか残っていない思い出が目の前の音にどんどん上書きされてしまいそうな感覚になるのが本当にしんどかった。新しいライブを見れば見るほど、今はまだ思い出せる大好きなあのライブの感覚をいつか思い出せなくなってしまいそうなのが本当に悲しい。ひとつでいいから映像作品、欲しかったな。

別にバンドになんの思い出も思い入れもないただのいち音楽ファンだったら、私もこの日のライブを絶賛して純粋に楽しんでいたんだろうなあ。

ライブ終盤に、一番大好きな曲が始まった時のあの全身の脱力感とジワジワ込み上げてきた嫌悪感は、もう二度と味わいたくない。ライブで聴くたび多幸感で満たされたあの感覚にはもうなれなかったし、新しいメンバーのソロパートとアレンジが加わったのも申し訳ないけどものすごくしんどかった。正式に加入することが決まったから、今後この曲を演奏するときはずっとこれなんだろうなと思うと、一番好きな曲だったけど正直ライブではもう二度と聴きたくない。こうやって好きだったはずのミュージシャンを嫌いになっていってしまいそうなのも本当に嫌だ。でも全然受け入れられない。

常に「今が一番かっこいい!」って言ってくれるバンドマンはそりゃかっこいいけど、オリジナルメンバーに「前作よりも新曲のほうが良い」とか「前よりも良いと思ってもらいたい」とか発言されるのもすごいモヤモヤしてしまう。過去は過去でファンにとっては大切で大好きな思い出なんだからそんな比較するようなことしなくてもいいのに。過去は過去、今は今でいいのになー。前作をリリースしたとき「これが遺作になっても悔いはない」って言ってたの嬉しかったなー。

久しぶりにライブ見ていいねって言ってくれた人たちに、私が大好きだった4人のライブももっともっと見て欲しかったな。本当に本当に最強だったのにな。

やっぱり続くって奇跡みたいだから、大好きな人たちには少しでも長く続いてほしいし、続く限りは少しでも多く良い夢見て欲しいなあって改めて思った。これは私の目標。



まあ全部、いらない感情を抱いてしまうめんどくさいファンのワガママなんだけど、好きなものがないと生きられないくせしてこうやってまた何かを好きになるのが怖くなってしまう。しばらくライブ見る勇気ないけど、またいつか見れる日くるかなあ。